幻の湖

By | 2016年9月24日

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幻の湖

出演: 南條玲子・隆大介・星野知子・長谷川初範・かたせ梨乃・宮口精二 監督: 橋本忍 東宝 2,700円 1982年

邦画史上3本指に入るとされる(?)カルト映画。リフレッシャー的な映画ではないのだが、昭和50年代の雄琴ソープ街の様子をカラー映像で見ることができる。

ストーリーは、雄琴のソープ嬢が飼っていた犬が殺されたので、犯人を探し出して復讐する、というサスペンスなんだが、なぜか同僚のソープ嬢が米国のスパイであり、中盤で織田信長が登場して小谷城攻めをする本格的な時代劇になり、マラソン大会が2回あるスポ根映画の要素もあり、仏像が登場する宗教的な要素もあり、最後は宇宙遊泳をするSFになり、そこに琵琶湖の美しい風景をこれでもかと重ねてくるという、本当に難解なものだ。主演女優のへたくそすぎる演技も見もので、そのくせ時代劇のところだけまともで(信長が北大路欣也w)、全編通して一番いい演技をしているのは誰が見ても犬のシロというあたりもカルト化に拍車をかけているといえる。

あまりに突拍子もない映画なので、逆の意味で有名になっている作品だ。沢山の映画好きがレビューしているので、気になる人はググってみたらいいだろう。

で、私はなぜこれをここで紹介するのかというと、先ほど書いたように30年以上前の雄琴の光景が見られるからなんだが、これについてリフレッシャー的な視点から考証・解説を入れていこうと思う。

まず主人公が働いている店は「湖の城」という設定の店なのだが、これは現在もある「かわいっくす(旧:竜宮城)」で間違いない。店舗外観は30年経ってもほぼそのままの状態。雄琴へ行くリフレッシャーであればすぐにわかるだろう。映画では軒先に「湖の城」と書かれた大きな提灯がついているが、これはさすがに撮影用に変えられている。現在の店舗は提灯がついてないが、竜宮城時代は映画と同じ形・サイズの「竜宮城」と書かれた提灯がついていた。

映画での店内は遊郭のような純和風なので、これはソープランドをそのまま利用しているはず。さすがにプレイルーム入口部分とかは映画用に軽くセットを組んだのかとも思うが、ベースの和風のお城っぽいのはセットではなく、店舗そのままだ。当時の雄琴ソープの内外観は日本の城郭か西洋のキャッスルかどちらかだったので。もちろん私は雄琴ソープの黎明期は生まれていないので知らないのだが、もるだライブラリーにある資料と私が後の時代にちんこを駆使して確認した情報によるとそのように判断できるのだ。

竜宮城は雄琴の店舗としては狭いので、店内のシーンは御三家(現:さくらん)とか聚楽とかで撮ったのかとも思ったが、(待合室の座椅子とひじ掛けが御三家のものと似ている)、プレイルームのシーンがそれを否定している。カギは一瞬映る金色のバスタブだ。これは実際に竜宮城で使用していたものと同じなのだ。御三家はこのタイプのものではなく、埋め込み式なのだ。そして決定的なのはフロントの造作だ。これが100%一致するので店内撮影も竜宮城で間違いない。まあ、普通に撮影側の都合で考えたら1店舗で全部撮るしな。いくら東宝50周年作品でも雄琴全店巻き込んで撮影はしないだろうし。

衣装に関しては、資料によると当時の竜宮城の衣装はミニの花魁衣装なので、映画オリジナルだと思う。(脚本かいた橋本もオリジナルといった様な事を言っているので)。でも非常に似た着物の衣装は当時の雄琴の鹿之介、大阪城などで使われていたので、それをヒントにしたのかもしれない。とくにマジックテープで帯を外して裸になるシーンなどは、時代劇を手掛けてきた橋本がそんなチンケな衣装でOKするとも思えないので、ソープの実際の衣装を参考にしたのじゃないかと思えるのだ。

主人公の住んでいるアパートに関しては、これは当時雄琴には「トルコ人種用マンション」というのが複数あって、トルコ人種用というのはトルコ関係者が利用するマンションのことなんだが、広岡敬一によると、近辺に10棟400世帯分あったという。映画では湖がよく見える寮に同僚と住んでいる描写になっているので、いわゆるトルコ人種用マンションに住んでいるという設定なんだろう。私の調べでは主人公の住んでいることになっているマンションはもうない。あった場所は雄琴港口の信号と北雄琴の信号の間のR161沿いの琵琶湖側だ。私は二反田壮(ソープの従業員寮として使われていた)というアパートではないかと睨んでいる。二反田壮の当時の写真を見ると、映画のものと外観がかなり似ているのだ。もちろん図書館で当時の住宅地図を調べたらはっきりわかるのだが、そんなせこいことをするのはマニアの流儀に反するので調べていない。そして手前側にもう一つ背の低いアパートがあるが、これは雄琴ハイツで間違いなかろう。こちらは今でも残っている。そのすぐ右側(京都側)に2軒のトルコがあった。トルコのすぐ横にあるマンションですよということを視覚に訴え意識させたかったのだろう。

それから後半のシーンでかたせ梨乃と主人公が話をするシーンであるが、これは「花影」がセンターに見える構図で、右側にも建物が見えるのでU字の頂上付近の外側から撮ってる。今のあがりゃんせのフットサル場のあたりだ。話が終わると、かたせ梨乃を乗せた高級外車が荒れ地を走り去っていくが、あがりゃんせが出来るまではあんな荒れ地だったのだ。今でも川筋通りの大正寺川を隔てた京都側はそれと同じような田んぼと荒れ地が広がっている。当時の趣が残っているのはもうあの辺だけになった。

そしてハイライトのキチガイ包丁女と音楽家のマラソン大会のシーンだが、ここで注目したいのは「ヒエン」の大看板がまだ残っているということだ。リフレッシャー的に最も価値が高いのはこのシーンだ。数秒写るこの看板(もちろん夜は光る仕様)を見られるだけでも2時間44分の意味不明な映画を我慢して見る価値がある。なぜなら秘苑はもう無いからだ。看板の名残すらないのだ。嬉しいことにヒエンの看板が点灯している。どのような光り方をしていたのかまでわかってしまうのだ。その他の店舗の看板の夜の映像も幾つかのシーンで収録されているので、広岡敬一の著書やミューザーで見たことがあるあの写真が映像で見られる。ネオンがギラギラしていて素晴らしい。雄琴の巨大ネオン看板がギラつく様はやはり迫力がある。

もう一つの見どころは、やはりここ、雄琴のソープ街が引きで写るシーン――冒頭12:23でカメラが左に舐めて行くシーンだ。これは街の全体像がよくわかる。ずいぶん広いが日本で一番大きいトルコ許可地だったんだから当然だ。撮っているのは国道161号を隔てた比叡山側からだ。このシーンで大事なのは雄琴港の近辺にある「東京」(のち男爵→ラブ&ボディ)、「羽衣(のち桃太郎)」、「白雪」がしっかり映っていることだ。雄琴の街の北側ランドマークがこの3店舗というのが非常によくわかる資料であり、大変貴重な映像だ。

この3店舗は雄琴出店の2~4軒目の店である。1軒目は花影というのはみんな知っており、写真も探せばけっこうあるのだが、2~4軒目のこれら店舗は資料が極端に少ないのだ。とくに羽衣と白雪はそうだ。このエリア自体が現在の雄琴のソープ街からかなり離れているので、ここにソープがあったということをみんな忘れてしまっている。かろうじて東京(ラブ&ボディ)の建物が残っているので、ああ、ここにもあったんだと思い出させてくれるが、これが撤去されたらもう完全にソープを思い出させるものが無くなる。土地が浄化されてしまうのだ。「羽衣」「白雪」があったところは、いまは新興住宅地になっている。トルコ人種用マンションもいくつか残っているが、空きが目立つ。琵琶湖畔にソープランド街が誕生して今年で45年。街の浄化はある時を境にゆっくりと、だが確実に進行している。我々がいくらスペルマを発射したところで焼け石に水、もるだの党が政権を取らない限りこの流れを止めることは出来ない。雄琴ソープランドは琵琶湖の在来種と同じく将来の絶滅が約束された業態なのだ。

雄琴港へバス釣りに訪れた青少年が「男爵」の大看板を見て次第次第にその意味を知り、やがてこの街にバス釣り以外の目的でこっそり訪れ大人になるのが一昔前の雄琴デビューの一流儀であったということを最後に記し、駄文を終わりにしたいと思う。

※実際に映画を見ようとされる方へ。
ネットでは「○○のシーンで大爆笑する」とか書かれていますが、初めて見る場合は1度も笑わないと思います。正しくは、「映画を見る」→「頭の中が???になる」→「意味が解らないのでネットでレビューを検索して閲覧する」→「大爆笑する」です。予備知識なしで見ることをお勧めします。
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