青年将校と慰安婦

投稿者: | 2018年9月3日

青年将校と慰安婦

みやま書房 谷川美津枝 1986年 1300円

だいぶ古い本です。

大戦中の軍人と慰安婦に関する記録や聞き取りを集めたオムニバス形式の書籍なんかなと思ってたんですが、そうではなくて、松本良男(陸軍軍人・戦闘機乗り)のリフレッシャーぶり(慰安婦との恋愛)を書き記した書籍でした。

ですので、半分くらいはいわゆる「戦記物」でした。

著者はぜんぜん別人で、「ものいわぬ娼妓」という遊廓の本を書いた人です。どういうことかと言いますと、その遊郭本を読んだ松本が「これまでの従軍慰安婦の物語というと、殆どが暗く、もの悲しいものばかりで、人間としての本質を失った女性に仕立てあげられています。慰安婦といえども稀ではあっても、戦場の一隅で、人間らしい幸せな日をすごした女性がいたことを後世に残してほしい。知っていることは全てお話しますから、お書きになってください」(あとがきより)と言って、この本が出来上がったらしいよ。

内容としては、大戦初期の満州(二等兵)時代からラバウルやフィリピンと転戦して、最後はレイテ(少尉で古参兵になってる)で特攻機の直掩機として出撃して、不時着して捕虜になるまでの話が書かれている。その間に関わった慰安婦が数名出てくるわけですな。

この人の本では、「秘めたる空戦」っていうのが出てるので、さらに詳しく女以外の部分について読みたい人はそれを読んだらいいでしょう。陸軍の人なので搭乗機はゼロ戦ではなく、一式戦(隼)と三式戦(飛燕)です。

んで、私はいままで、料理屋とか将校倶楽部ってのが遊郭や慰安所と具体的にどう違うのか良く解らんかったんだけど、これ読んだら良く解ったよ。悲惨じゃない慰安婦もの恋愛物語を読みたい人にはお勧めしますね。でも登場する慰安婦の女は死ぬんだけどね。悲しいね。

左寄りの人からすると、あってはならない書籍に該当するんじゃないでしょうか。慰安婦が慰安婦っぽく描かれていなくて、兵隊と恋愛をして、兵隊と平等どころか特別に良い扱いを受けていたり、高給取りとして描かれていたり…。もちろん強制連行なんて微塵も出てこないので。そして「日本が悪い」という洗脳用語は1回も出てきませんし。

まあ、戦地に関する記述や恋愛部分がちょっと出来過ぎだろ的な感もあるので、そういうのと相まって「これはフィクションだ」という人も出てくるんだと思います(笑)。