売春島
高木瑞穂 彩図社 2019年(単行本は2017年) 750円
タイトルが凄いストレートですね。渡鹿野島についてのルポです。ああ、彩図社的(w)なやつか、と思いがちですが、そうでもないです。売春婦の話はあんまり出てこなくて、プレイの話も殆ど出てこなくて、893屋さん、女衒、ホテルオーナーとか、いわゆる上流側の事業主やらを中心に取材して書かれています。取材時期は2010年代。
著者の興味は「いつから売春島になったか」という部分に重きがあるようで、それについて、江戸や明治の海運時代までさかのぼらない、昭和の高度経済成長期からの紐解きを目指すのが斬新です。全体的に、今までだれも踏み込んで書いてない部分・時代から書かれているので興味深いですね。
売春や渡鹿野島に関わらず、やくざのインタビューとか、シノギの話とか好きな人は面白いんじゃないでしょうか。溝口敦とか一橋文哉とか好きな人は。文庫版は後日談的なあとがきが付いていますが、これおもしろいな(笑)。これでもう1冊書いてくれよ。
ただ、書き方がちょっとアレなんですね。「急いで本にしたんだろうか、これまだ書きかけだろ? 取材メモの段階だろ?」みたいな感じなんですよ。文章やら構成が。後半は特にひどくて、ただのインタビューの書き起こしになっている。カギカッコ(会話)のなかに段落があるとかどうなんだこれ。しかもまとめが箇条書きって……。
ということで、グイグイ本にのめり込むことが出来ない。もうちょい時間をかけて書いたら(そういう問題じゃないのかもしれないが)更に何倍も読みよくて面白かったんじゃないかなあ……。内容自体はいいのになあ。
ところでこの著者は東京でキャバクラ雑誌やってたやつと同一人物か?女みたいな名前に見覚えがあるんだが。